決壊 上巻

決壊 上巻

決壊 下巻

決壊 下巻

まず表紙がかっこいい。2000年代初頭に起きた、いろいろな事件をコラージュしたような作品。フィクションだけど、土地や時事ニュースの当事者が実名で登場しているせいもあって、ノンフィクションぽい。とにかく「これを一人の人間が描いたのか?」と驚かずにはいられない、登場人物たちの個性の細やかさ。マスコミ・警察から容疑者扱いされ、否定しながらも否定しきれない、もう一方の人格と対峙する優等生気質の主人公の葛藤の繰り返しに、読んでいるこっちが気が狂いそうになる。読みながら「あーこういう考え分かるわ」て共感するのと違って、深層心理を掘り返すような進行が多いので、心の奥底を覗き見られたような、何とも気持ちの落ち着かない読後感。エンディングの救われなさも凄い。哲学的で難解な台詞やモノローグが多く、読みながら何遍も挫けそうになったけど、どれも後への伏線になっているので、繰り返し繰り返し読んだ。ずいぶん賢い人だなと思っていたら、平野氏は京大法学部のご出身だそうです。なんだか妙に納得(というか京大出身者には変わった人が多すぎる ※下巻には凄惨な描写が出てきますので、苦手な方はご注意下さい。