「TH|S |S |T」

MJはあらためて聞いた事がなかった。ヒット曲を人並みに知っている程度で、それ以上でも以下でもなく、今回の訃報がなければ、映画も見に行かなかったと思う(訃報があったからこそ映画化されたのだろうけど…)。映画は周囲で評判がよかったので、レディースデイに何気なく観てきた。まったくもって油断していた。あんなにかっこよくて素敵だとは!あっという間にクギヅケになった。オフステージではあまり感情の起伏がないように見えたけど、一度ステージに立つと、たとえリハでも一切の妥協がないプロフェッショナリズム。歌も踊りも素晴らしく、表現力も発想力も天才的であるのに、リハ衣装がへんてこだったり、演出の指示がとても謙虚で低姿勢だったり、スタッフのジョークにも、うまく応えられずモジモジしながら語尾を濁したりしていて、そのギャップがかわいいような痛々しいような、妙な気持ちになった。例の如く瞬きを忘れて、途中で涙が流れて焦ったけど、周囲にも目頭を拭っている人たちがけっこういたみたい。「凄い!かっこいい!」って思いながら見ていたけど、終盤くらいにふと「こんなに素晴らしくてかっこよくて生命感に満ち溢れてるのに、この人はもうこの世にいなくて、もうこのパフォーマンスを実際に見ることはできないんだ」と気づいたら、すごくショックだった。故人を偲ぶ映画、じゃなくてライブ映画を観に来たつもりだったんだもんな。この紙一重にあらためて気づいてしまったので、次に観る時はまた違う気持ちで臨むことになりそう。

■公式サイト TH|S |S |T